資料ライブラリー

討論

2011年2月定例会 予算特別委員会総括質疑

2013/05/16 更新
[ 討論 ]
この記事は 23 分で読めます。

●予算特別委員会の総括質疑が3月4日に行なわれ、日本共産党からは、まえくぼ義由紀委員、松尾孝委員が質疑に立ちました。質問と答弁の大要を紹介します。

まえくぼ義由紀  総括質疑・・・1
松尾 孝     総括質疑・・・5
他会派質問項目 ・・・・・・・・8

2月定例会 予算特別委員会総括質疑

まえくぼ義由紀(日本共産党、宇治市・久御山町)2011年3月4日

 日本共産党の前窪義由紀です。知事に数点伺います。

子どもの医療費無料化について

【前窪】まず、子どもの医療費無料化についてです。経済的事情によって、病院にいけない子どもたちが増えています。費用の心配なく安心して子どもたちが病院にかかれるようにすることは、子育て世代の切実な願いです。本府においては、伊根町で高校卒業するまで、南山城村で中学校卒業するまで無料になるなど、府内北から南まで25の市町村で、本府制度に上乗せをし、独自助成の拡充が広がっています。本府の制度と同じ制度にとどまっているのは、京都市だけです。府民の運動の広がり、府内自治体のとりくみが進む中、知事は昨年の知事選挙のマニフェストで「小学校にまで拡充する」と府民に約束されました。現行の3000円の負担をなくし、少なくとも通院医療の無料化を小学校卒業まで広げてほしいというのは切実な願いです。市町村との協議状況について、まずお答えください。
【知事】子どもの医療費助成制度については、いまでも全国で上の方にあるんですけれども、子育てに優しい京都府作りを進めるために、保護者の経済的負担の軽減や、子どもの健康の保持・増進をさらに充実したいと考えています。このため、実際に実施されるのは市町村ですから、京都市、および市長会、町村会から推せんされた4首長、宇治市、京丹後市、井手町、そして伊根町、このワーキンググループによる具体的な検討を重ねるとともに、すべての市町村から、福祉医療制度に対する意見等を伺うなど、拡充の時期および内容について検討を進めているところです。ワーキンググループの具体的な検討状況としては、子どもの年齢別の医療費の分析、通院(無料化)の対象年齢を拡大した場合の追加費用額の分析、通院(無料化)の対象年齢拡大等に関する府民アンケート調査などを行なっています。制度拡充に当たっては、財源確保も不可欠ですので、事業実施主体である市町村との合意、連携が必要なので、引き続き、市町村と十分に調整しながら検討を行っていきたいと考えています。
【前窪】先の書面審査で、山内副知事は、「一番財政負担を伴うのは京都市だと思う」と答えられました。府制度の拡充のためには、他の市町村は全部上回っているわけですから、府が底上げすれば非常に助かるということですが、京都市との協議が整うかどうか、これにかかっていると思われます。京都市との具体的な協議は進んでいますか。
【知事】京都市も委員に入っていただいてますので、その面については具体的な協議を進めています。これは、京都市だけの問題ではなくて、(通院無料化の)実施を、今回小学校まで上げていこうと思っていますので、小学校まで上がっていないところも多数あります。その制度によっては、1回500円という形でやっているところもありますから、そういった財源も含めて(検討を)していかなければならないので、京都市一つの問題ではないと考えています。おそらく、人口的にいきますと、ほとんど多くのところが、負担の増える市町村ということになろうかと思っています。
【前窪】いずれにしても協議を進めていただきたいわけですが、さらに、山内副知事がこの問題については「積極的に、早めに検討を進める」と答えています。知事、そういう答弁がされたということを十分検討いただき、早く実現するよう、強く求めておきたいと思います。

府営水の料金改定について

【前窪】次に、府営水の料金改定について伺います。府営水の料金については、昨年11月の府営水道経営懇談会は、1トンあたり、乙訓・木津系は7円から8円の値下げ、宇治系は1円値上げの提言を行ないました。同時に、府民負担軽減へ、「府の一段の努力」を求めました。提言を受け、本府は宇治系の料金を据え置き、乙訓計10円、木津計11円の値下げを決めました。このことは、私ども議員団が求め続けてきたもので、評価するものですが、値下げ財源として一般会計から1億1千万円の貸し付けは、問題だと思います。来年度以降、平成26年まで、4年間貸し付けで対応し、毎年利息の支払いを求め、26年度を過ぎれば元金の返還も求めるというものです。公営企業管理監は、先の書面審査で、「公営企業にとっては非常に厳しい部分」と答弁しました。なぜ貸し付けということになったのか、知事の判断で、水道会計に非常に厳しい借金を背負わせる、こういうことになるではありませんか。
【知事】水道会計も、私どもの会計ですから、どちらかにつけてるかだけの話です。問題は、水道料金は独立採算を原則とした公営企業会計によって、受益と負担の関係を明確にすることが、法的に求められています。その中で、これは一般会計からお金を出すときは、繰り出し基準で出すことになっていますので、そうした点では、私どもは、必要な繰り出しは繰り出し基準で行なっていくわけですが、それ以上のものは、経営状況を明確にするためには、貸し付けでやっていくというのは、私はこれは、公営企業会計上の原則だと思っています。こうした中で、今後、府も受水市町とともに、経営改善に向けていっそうの努力を進めていきますので、貸付金については、今後の水道事業会計の状況も見極めながら、判断をしていくことになると思っています。
【前窪】水道会計も一般会計も(区別は)ないんだ、一緒なんだという意味合いの答弁だと思います。だったら、私は、なぜこういう厳しい措置をするのかということを、あえて知事に申し上げておきたいと思います。今回の措置は、結局水道会計、住民負担に回すということになるんですよ。水道懇のいう府の積極的な支援、これとは大分、意味が違うと思います。そもそも、3浄水場接続等の事業は、地震等災害時のライフラインの確保で、元々採算ベースに乗らないものです。特別の対策が必要だと思います。その意味でも、貸し付けでなく、府が責任を持つべき事業だと思います。公営企業管理監は、「受益は南部の65万人の府民、税金を使って特別な支援をするのは問題」と答えました。知事、府で毎日65万人もの府民を対象にしているこのような事業がありますか。65万人もの府民を「一部の府民」扱いにすることは決してやってはならないと、公営企業管理監の答弁を聞いて思いました。そんなことを、府の責任を果たそうとしない理由に位置づけているとしたら、大問題です。知事の答弁を求めます。
【知事】たぶん、公営企業に対する基本的な認識が違うと思います。公営企業会計というのは、きちんと入りと出を区分して、その中で、今損失が出ているかもしれませんが、利益が出るかもしれない、従って、基本的な会計については、繰り出し基準に明確に規定されている形でやっていかなければならない。利益が出なければ、貸付金が続いていくわけですし、利益が出てきた時には返ってくる場合があるかもしれない。それが公営企業会計というものなので、損失を押しつけるわけでも何でもなくて、その関係の会計整理をしているだけです。
【前窪】26年度以降、非常に厳しい経営状況が続くということも(あり得ます)。いろいろ老朽化した施設の更新が入ってくるわけですから。そうすると26年以降も返還しない場合もあり得ると、いまの答弁では聞こえたので、ぜひそういう扱いをしていただきたい。現在、水道会計から一般会計に18億円も貸し付けています。貸し付けであれば、それを相殺すればいいことなんですよ。あえて、なぜこういうことをするのか。この点は、4億円を超える借金を水道会計に背負わせて、府民負担(料金負担)にしていく。こういう危惧があるからそういうことのないようにと、強く指摘しているわけです。知事、会計の問題ではなくて、府が本来責任を持たなくてはならない事業だということを、私は指摘しているということです。府民負担に回すことのないように、強く求めておきます。
【知事】一般会計なら府民の負担じゃないというのは、全く逆立ちした議論です。公営企業会計だって、一般会計だって、どちらにしても府民の負担なんです。公営企業会計なら府民の負担で、一般会計なら府民の負担じゃないというのは、全くの詭弁です。

天ヶ瀬ダム再開発見直しと、府の財政負担軽減について

【前窪】天ヶ瀬ダム再開発の目的として、国は、①宇治川・淀川の洪水調節および琵琶湖周辺の洪水防御。②京都府の新規利水。③発電。としています。事業費の増額は430億円で、本府の負担は利水で38億円、治水で44億円です。本府に利益があるとして、併せて82億円も負担せよということです。
 まず利水負担の問題です。現在、府営水道の日量18万トンの基本水量に対して、受水自治体の使用量は11万トン程度です。現計画ではしかし、23万トンの水量を確保することになっています。だから、今回の水道懇では、受水市町から改めて水需要予測の実施が要望として出されています。水道懇では様々な角度からの水需要予測の必要性、これが提言となっています。過大な水需要予測を見直せば、新たな水利権は不要となります。さらに、日吉ダム、比奈知ダムで使っていない水利権の活用をぜひ検討すべきです。これを天ヶ瀬ダムに付け替えれば、毎秒0.6トンに近い水利権は確保できます。いずれにしても38億円もの負担はなくなります。水道会計への負担を軽減するため、ぜひ検討していただきたい。
【知事】需給の問題については、いろんなものを見直さなければならないのは、確かにそうだと思います。ただ、現実の判断としては、たとえば取得しているダムの水利権については、国土交通省の実力評価から見ても、特に日吉ダムについては厳しい結果が出ているのはご存じの通りです。現在の供給量は60%という指摘でしたが、これは年間を通じた平均の数字ですから、渇水がいろんなところで起きている事態もあるわけです。我々は、最大の安全のところを見込まなければならないので、夏の渇水時期の時にそうなっている。府営水道の最大の給水量をかかえる宇治浄水場では、平成20年に一日の最大の供給水量が、施設能力の98%になっています。そして、暫定水利権の時は294%になっちゃうんです。そんな簡単に水利権の調節なんかできませんよ。そんなことができるんだったら、本当に苦労しない。負担の問題から全部やり変えなければならないんですから。それまでの間、我々はこうやって、きちんと、水需要もやっていってるわけですので、今の段階では、そんな都合のいい、水利の振り替えみたいな、言葉の上だけの話で解決できない問題だというのは十分承知していますので、府民の安心、安全を守るために、これからもがんばっていきたい。安心、安全に、やはり最大の責任を持つものとして、水がなくなった場合の府民の不安を考えたときには、余裕を持って施策を講じるべきだと思っています。
【前窪】京都府の水需要予測というのは23万トン。これが過大だというのは受水市町村からも指摘されているんですよ。知事がいくらそう言っても、現実がはっきり示しているじゃないですか。こうした見直しをやるというのが、水道事業を預かるトップとしての責任だと思います。
 次に治水負担の問題についてです。天ヶ瀬ダム再開発による治水効果は限定的、というのが流域委員会の意見でもあります。天ヶ瀬ダムの放流量、毎秒900トンから1500トンに増やすということにするわけですが、宇治川の環境破壊、あるいは堤防決壊などの大変な危険を伴うのが今回の再開発です。ですから地元からも、これは見直してほしいという声が粘り強くあるんです。こんな計画はいったん立ち止まって、再検討していく、見直していくことが今必要です。そうすれば知事、44億円が軽減できるんですよ。ぜひ検討していただきたい。
【知事】天ヶ瀬ダムの再開発事業は、能力を増すことによって、今対応できない洪水に対応しようとするものです。これから大きな雨が降ったときに、何かあったときにどうするんです。これは宇治市長さんからも、本当に切実に求められているし、久御山町長さんからも求められている。住民の代表の皆さんからも、何とか、この天ヶ瀬ダムの再開発事業をやって、より調整能力を高めて、大きな洪水に対応できるようにしてもらいたいというお話があります。私どもはそれに対して、安全を確保するために、こんどは下流域の掘削や堤防の強化も同時にやってもらわなければ、なかなか難しいという話もやっているわけです。その点については、国においてもしっかりと対応しているところだと考えています。
【前窪】水需要予測も見直ししない、水利権の振り替えも全く検討しない、そして治水問題でも、非常に危険なこういう1500トンの放流、これの再検討、見直しもしない、こういうことでは、国言いなりということです。治水、利水についても必要のない天ヶ瀬ダム再開発は、きっぱり中止すれば、82億円の税金のムダづかいをやめることができる。強く指摘しておきます。大阪の橋下知事は、槙尾川ダム中止という、建設途中であってもこういう判断を下しています。再検討を強く求めておきたい。
 最後に、天ヶ瀬ダム再開発の目的に「琵琶湖周辺の洪水防御」とあります。これにより利益を受けるのは、滋賀県側です。しかし、滋賀県の負担は一円もありません。「再開発により、滋賀県の安全率は上がらない」、書面審査でこう理事者答弁がありましたが、間違いじゃありませんか。知事、再答弁をお願いします。
【知事】間違いかどうかという問題ではなく、今滋賀について我々は、自分たちの洪水を防ぐために、実際迷惑をかけている部分があります。我々はそれをきちっと、天ヶ瀬ダムの再開発で解消していくということは、必要だと思います。それが大きな雨に対する流量の調節になって、宇治、久御山の住民の皆さんを始め、多くの皆さんの財産と生命と身体を守る、これは一歩も引けないことだと考えています。
【前窪】知事、そう言いますが、国の天ヶ瀬ダム再開発の方針では、「琵琶湖周辺の洪水防御の観点から緊急性も高い」と書いてあるんですよ。利益を受けるのは琵琶湖側ではないですか。なぜ、そういうことまでいろいろ斟酌しなければならないのか。言うべきことは言って、そして本府の負担も軽減していく、こういうことが今必要ではありませんか。国にぜひ、是正を求めていただきたい。
【知事】滋賀県に今迷惑をかけているわけですが、迷惑をかけているところに、迷惑をかけないようにするから金を出せというような強面(こわもて)の言い方は、私はおかしいと思います。
【前窪】下流側も迷惑をこうむるんです。1500トンも流されたら、宇治川の堤防なんかたまったものじゃない。指摘して終わります。

2月定例会 予算特別委員会総括質疑

松尾 孝(日本共産党、京都市伏見区) 2011年3月4日

TPP問題と農業再生について

【松尾】先ず、TPPについて伺います。一般質問でもお尋ねしましたが、知事は「全体像を見ないとだめだ」と強調されますが、当然のことです。私どもも、農業だけ見て反対と言っているのではありません。TPPは関税原則撤廃、あるいは、非関税障壁を取り払って、人、物、金が自由に行き来する、いままでなかった自由化の新たな枠組み作りであること、しかもこれを主導しているのが、アジアでの遅れを挽回しようというアメリカであることをしっかり見て、日本のあり方、国の形を変えてしまうようなTPPには加入すべきでないと主張しているのです。アジアの成長を取り込むという政府の言い分ですが、肝心の韓国、中国、タイ、インドネシアは入っていないんです。事実上の日米FTAであり、アメリカに取り込まれたFTAではないか、と言わざるを得ません。関税撤廃を始め、非関税障壁の撤廃で、経済、社会、国民生活全般に大変な被害を与え、国の将来を危うくするTPPにはきっぱり反対すべきではないでしょうか。改めて、知事の見解を伺います。
【知事】確かに、何らかの対策を講じることなくTPPに参加すれば、特に農林水産業で影響があることは明らかですし、他の産業分野でもいろいろな問題があると考えています。一方で、今中国もEPAとかFTAをどんどん進めていますし、韓国も同じように進めている。それぞれの圏域が、それぞれの経済圏作りをやっている中で、私どもはいろいろな交渉を通じて、どれが日本に一番いいのかということを明確にし、それを国民に問うていくべきだと思っています。どれがだめだといっても、そのTPP自身も、確かに原則はあるんですが、その原則というのも国家間の交渉ですから、いろいろと動いていく。米国と1対1だったら、まさに米国と1対1の交渉になっていくわけです。そうしたものを踏まえていくと、全体像をしっかり見据えて、TPPに参加するかしないかについても、たとえ交渉に参加しても、条件が合わなければ、TPPに入らないと菅首相も言っています。私たちは、農業に対する支援策、これは韓国も、FTAやEPAをやるときに大変なあれをやっていましたけれども、そうしたことも含めて、どうした形がとられるのかということを見据えて、意見を言うし、それまで、こういう心配がありますよ、ということは、具体的に提案として言っていくと言うのが筋だと考えています。
【松尾】言うべきことは言って、落ち着くところに落ち着くのが交渉というものだという趣旨を、前からおっしゃっておられるわけです。第4回の交渉がチリでありましたが、関税原則撤廃はもう動かせない原則だと確認されて、この3月にも協定の原案ができるというところまで話は進んでいます。6月に決定して、参加を表明するということになるのか、ならないのか、先のことはわかりませんが、そういうところに入っている。知事は輸出のこともおっしゃいましたが、今回の枠組みでTPPに参加して、日本が輸出でプラスになるということはほぼない、これは識者の一致した見解です。TPPには加入すべきでないということを強く申し上げておきたい。
 6月に農業再生方針を出すというのですけれども、知事は「万全の対策を」とおっしゃいますが、果たして「万全の対策」などがTPPの下であり得るのか、知事の考えを簡潔にお聞かせいただきたい。
【知事】まさに、国際交渉がどんどん進展していく中で、じゃあ日本はどういう形で、これからの経済圏を作り上げて、グローバルな世界に対応していくのか、この問題がいまの政府に大変問われているんですね。その点では、私はちょっと不安を感じているのは事実です。しかしながら、今後農業生産についても、様々なパッケージをやっていくわけですが、そのときに、おそらく、農家に対するきちっとした環境整備、京都の場合は中山間地域が多いわけですから、いまでも担い手が大変不足していて、非常に厳しく、このままでいきますと、京都の農業の先行きは非常に大変です。そういった問題に対して、私はしっかりした提案をしていく、そして競争力もつけていって、世界では食料がこれから不足してくるわけです。食料の囲い込みも始まってきます。そうした問題も含めて、日本としてどうした体制をとっていくのか、ということを政府として先ず明らかにしていくのを見る。我々はそれに対して、京都の農業の大切さを訴えていくのが筋だと思っています。
【松尾】TPPに参加しないでどうするのか、というご意見ですが、中国は、ASEANプラス3でいこうというのが、韓国、インドネシア(を含めた)意見なんですよ。それがアジアの本流にならなきゃだめだ、ということを強く指摘しておきたいと思います。知事がおっしゃる、TPPの下で「万全の対策」などというものはあり得ないと、改めて強調しておきたいと思います。WTOでは政府は、農業の多様性の共存の主張を続けてきているわけですし、今、食料主権の確立の道こそ、本当に農業再生の道だということを改めて強調させていただきたい。

農業の振興 企業育成でなく、集落の強化こそ

【松尾】そういう点から、今回の議案には、京都の農業をどうするかということで、「京力農業づくり事業」が提案されていますが、中身は簡単に言いますと、農商工連携や6次産業化などで所得を増やして、強い農業経営を育成して、これが地域農業の核になってしっかりやっていけるようにしようというもの。それで地域全体を面的にカバーしていくということは、実際にはできないんです。ここのところをよく考えて、そういった企業的な経営の育成ではなくて、集落の力をどう強化していくのか、ここに力を集中することがたいへん大事です。担い手の育成は当然ですし、オペレーターなど必要な労力の配置もやって、機械の更新などにも支援していく。そして可能な対策を府として講じていくと。また、コメの問題については、今食料主権の問題も言いましたが、なんといっても生産費を償う価格保証、そして農業の多面的な機能にしっかり応える所得補償、安心してコメづくりが続けられるそういう状況を作っていくことが非常に大事だ。このことこそ農業再生の道であるということを申し上げ、京都府として全力を挙げられるよう、強く求めておきます。ご答弁いただけるようでしたらお願いします。
【知事】私はTPPでもFTAでもEPAでも、どれの信奉者でもありません。先ずきちっとしたこれからの貿易の枠組みを示すべきだと言っているだけですので、そこは誤解なきように。それから、京力農業づくり事業がすべてではなくて、これは農林水産業予算の16%ですから、いろんな予算も「いのちの里」はじめやっているので、そこは全体像を見ていただきたいと思います。
【松尾】先程来指摘しましたように、やっぱり農業で生活できる状況をどう作るか、ということが一番肝心な問題ですから、そこのところをしっかり踏まえて、やっていただきたい。

住宅リフォーム助成制度について

【松尾】次に、住宅リフォームの問題です。私ども、この間、与謝野町が実施しておられる事業が、たいへん地域の仕事おこしに役立って注目されていると申し上げてきました。とにかく、900を超える発注者があり、町内の建設業者の7割を超える人たちが、その仕事に何らかの形で携わってやっている。トータルの事業費が22億になる。こういう話で、それほど大きくない与謝野町で、この22億の工事がやられていることは、たいへん大きな力だと思います。商店街などにも金が回っていくわけですから、地域活性化に大きく寄与していることが明らかな、こういう与謝野町の住宅リフォーム助成事業、知事はどう評価されますか。
【知事】それぞれ地域活性化のためにいろいろな努力をされているかということは、私はそれぞれの地域の市町村の実情として評価したいと思いますし、まちづくりに関することに対して、与謝野町ががんばっておられるならば、それはそれで評価すると思います。ただ、ちょっとよく見てみますと、与謝野町で一番多いのは下水道なんです。下水道の接続事業というのは、これは法的に義務づけられているので、補助金があろうとなかろうと、やらなきゃいけないんです。ですからこれは、どちらかというと、業者に対する対策ではなくて、与謝野町民の下水道接続に関する負担金の軽減措置なんです。それは、新規の事業を創出しているものではないということを、先ず申し上げたいと思います。それから残りで多いのが、屋根と壁なんですね。私は、屋根を直すのに、補助金があったから屋根を直すのかなということが、全部ではないと思いますよ。どう考えても。壁もいろいろあると思いますが、私はたとえば、松尾委員が家の壁を直すのに、補助金を出そうという考えはないですね。
【松尾】下水を例に挙げられましたが、町の担当者に直接お聞きしますと、本管が入って3年以内にやりなさいとなっているわけですよ。確かに法的な問題もあるわけです。ところが、やれない人が多いんです。そういう人たちが、この際なんとかということで、やり始めている。乗っているわけですから、そこのところは中身をよく見る必要があると申し上げておきます。屋根、壁の話も出ましたが、とにかく町内の業者の皆さんが、「よそはみんな仕事が減っているのに、与謝野町は減っていず増えている」(とおっしゃる)この一言でこの事業の大事な点、しっかり見ていただく必要があると思います。先ほど、知事は「贅沢リフォーム」という関連の話をされました。しょっちゅうこれをおっしゃいますが、決して贅沢ではない、限度額は20万円ですから。そういう見方は改めて、やはり住宅リフォーム(助成)を京都府としてもやると。秋田などは、県の上に町が乗って、しっかりやってるわけですから。そのことを強く求めておきます。
 それからもう一つ申し上げておきたいのは、住宅リフォームが政策としても今たいへん大事になってきているという点を強調しておきたい。府の「住生活基本計画」にも明確に位置付けられているわけです。国の方もこの6月に、「リフォーム・トータルプラン」を作成するということです。この際、住宅リフォームの政策的位置づけも明確にして、京都府として積極的に取り組んでいくとべきと考えますが、いかがですか。
【知事】私どもも、住宅リフォームを全部否定しているわけではなくて、さっきの与謝野町のように、住民の負担軽減という意味合いを持つのは、まさに与謝野町の事業ですから、町の事業がうまくいくために、住民負担の軽減を図るために、与謝野町がリフォームについて(補助を)出されるというのは、私は理解しているつもりです。私たちはその中で、京都府として、特に広域行政の目的として、たとえばこれからは、エコだとか、木造住宅の特に府内産材のものだとか、耐震性のものだとか、あるいは高齢者の方々のバリアフリーだとか、こうした行政目的をしっかり定めてやっていくことによって、住宅施策にも貢献していきたいと思っています。そういう中で、効果的な税金の使い方もできると考えています。
【松尾】いままでいろいろ議論がある中で、知事がしきりに「贅沢」論を言われるわけですが、それは当たりませんし、経済効果の点でも、これは立派に地域経済を活性化していく一つのてこになっているのは間違いないわけですから、ぜひしっかり検討して、やっていただきたいということを改めて強く求めておきます。
TPPと住宅リフォーム問題について、お聞きさせていただきました。どうか、地域の活性化を図る上で、先程来、他の会派の委員さんからもございましたが、本当に今、府が思い切った手を打つことが強く求められている。私も全く同感です。そういう点で申し上げているわけですから、改めてよく検討していただきたい。強く求めます。

府民の暮らしと農業を守り、地域経済活性化のための役割を

【松尾】以上で、今回予定しておりました質問を終わらさせていただきますが、委員長のお許しをいただきまして、一言申し述べさせていただきます。71年に伏見区で初の共産党の議席をいただきまして、40年になります。議員としては7期28年ということですが、この府議会で府政に携わらせて頂いて参りました。今期をもって引かせて頂くこととなっているわけですが、この間、その時々の政治課題、あるいは府民要求を取り上げて、しっかり頑張らせて頂いたつもりでございます。

 特に農業問題、近年では温暖化対策につきまして、取り組んで参りましたが、最後になりました今議会でも、TPP問題、あるいは温暖化対策などについて、取り上げさせて頂いたことを、たいへん喜んでいるところでございます。特に農業ですけれども、これはGDPで計れるものではございません。文字通り、その中心である稲作、日本の歴史、文化、あるいは生活の源であり、農山漁村は日本の心のふるさとです。
 京都府議会、知事を始め理事者の皆さん方、また、府議会の皆さん方が、府民の暮らしを守る、京都の農業をしっかり守る、発展させていく、こういう立場で、がんばって頂きますことを、心からお願い申し上げます。私も、議員はやめても、微力ながら尽くして参りたいという気持ちでございます。議会におります間、多くの同僚の皆さん、理事者の皆さん、いろいろとご厚誼を賜りましたことに心から感謝を申し上げまして、終わりにさせて頂きます。どうもありがとうございました(拍手)。
【知事】地域の活性化、農業の活性化、これからも京都府は全力を挙げて取り組んで参ります。松尾議員、7期28年、本当にご苦労さまでございました。

《総括質疑での他会派議員質問項目》


■坪内正一(自民・長岡京市及び乙訓郡)
1 府政運営について
2 府営水道について
3 京都第二外環状道路について
4 教育振興プランについて

■奧田敏晴(自民・城陽市)
1 中小企業支援について
2 京都モデルフォレスト運動・京都モデルファーム運動について
3JR奈良線の複線化事業について
4 地元問題について

■秋田公司(自民・京都市南区)
1 デフレ対策と内需拡大について

■中小路健吾(民主・長岡京市及び乙訓郡)
1 財政の現状と今後の見通しについて
2 公の施設の管理のあり方について
3 職業訓練のあり方について

■松岡保(民主・木津川市及び相楽郡)
1 地域振興計画について
2 地域包括ケアについて
3 少年非行問題への対応について

■村井弘(公明・宇治市及び久世郡)
 1 京都経済の活性化について
2 府南部の救急医療体制の整備について
3 山城地域の振興について

■上田秀男(創生・南丹市及び船井郡)
1 平成23年度当初予算案について
2 行財政改革と職員定数のあり方について
3 農林水産振興基本計画について
4 警察署における柔剣道・逮捕術等の強化対策について
5 地元問題について (要望)